中小企業が20代正社員を採用するのに長文求人は必要か?

20代に刺さる求人とは?「長さ」よりも「伝わる設計」が重要

中小企業が20代の正社員を採用する際、「求人原稿をどこまで詳細に書くべきか?」という悩みを抱えるケースは少なくありません。企業の魅力を伝えたいがために福利厚生や社風、成長性、ワークライフバランスなど、伝えたい要素が多くなり、求人がどんどん長文化していく傾向があります。

しかし、本当に求人の文章が長ければ長いほど応募につながるのでしょうか?

実は、「長文かどうか」ではなく、「読み手である20代にとって情報が整理され、興味を持てる内容になっているか」がもっとも重要なポイントです。求職者が情報を「読む」かどうかは、文章量ではなく「読みやすさ」と「共感性」に大きく左右されるのです。

振り返ると見えてくる20代求職者の心理とは?

求人原稿を設計する上で、20代の求職者がどんな心理状態にあるのかを理解することが不可欠です。思い返してみてください。みなさんが20代だった頃、就職先を選ぶ判断基準はしっかりと確立されていたでしょうか?

おそらく多くの人が、「何となく良さそう」「友達が言っていたから」「家から近い」といった、直感的で感覚的な理由で仕事を選んでいたはずです。つまり、20代はまだ社会経験が浅く、自分の価値観やキャリア観も形成途中の段階であり、だからこそ周囲の意見やSNSで見かけた評判に大きく影響を受けやすいという特徴があります。

とくに近年では、ブラック企業に関する情報やネガティブな会社の口コミが拡散されやすくなっているため、20代の求職者は「失敗したくない」という心理が強く働いています。だからこそ、求人原稿には「納得感」「職場のリアル感」を持たせることが重要になるのです。

求人は長くてもいい?そもそも、どれくらいが長いの?

「求人原稿は長いと読まれない」という話を聞くことがありますが、実際には長さそのものが問題なのではありません。

問題となるのは、同じ情報が何度も繰り返されていたり、要点が不明瞭だったりすることで、読み手がストレスを感じてしまう点です。たとえば、企業理念を紹介するセクションと仕事内容を紹介するセクションで、似たような文章を繰り返してしまうと、読者は「結局何が言いたいのか?」と感じて離脱してしまいます。

長文でも、情報がしっかりと整理され、構成が分かりやすく、段落ごとに異なる価値を提供できていれば、20代の求職者も最後まで読んでくれます。大切なのは、「読みやすい設計」と「心を動かす工夫」です。心を動かすためには、20代の求職者が思わずスマートフォンのスクロールを止めてしまう情報を盛り込むと効果的です。

20代の求職者が求人を読むときの心理は、みなさんがネットショッピングで高額商品を購入するときの行動と非常によく似ています。たとえば、3万円以上のプレゼントや普段購入しない商品を購入する際、多くの人がスペックや商品の特徴だけでなく、実際に使った人の口コミ、使用感、そして時にはネガティブなレビューまで丁寧に読み込むのではないでしょうか?購入する前に「本当に失敗しないか?」を確かめたいという気持ちが働いているからです。

商品サイトを見ていて「同じ説明が何度も出てくる」「要点が整理されておらず読みづらい」と感じたら、読むのをやめてしまったり、商品自体に不信感を抱いたりすることもありますよね。求人原稿もまったく同じで、内容が重複していたり、読み手にとって新しい発見がないと判断されれば、応募どころか読み進めてもらうことすら難しくなるのです。

一方で、目に留まった「必要な情報であろう」内容が書かれている部分では、自然とスクロールの手が止まり、自然と読み込んでいる自分に気づいたことはありませんか?これは、「自分にとって必要な判断材料だ」と判断したときに起こるごく自然な行動です。求人原稿においても、この「スクロールを止めたくなる情報」をどこにどう配置するかが、応募率を左右する重要な要素となります。つまり、「すべてを読ませよう」とするのではなく、「読まれる部分をつくる」設計が必要なのです。

求人に必要な情報は?20代に伝わる言語で「違い」と「理由」を説明する

1. 専門用語を避けて、未経験でもイメージできる言葉を使う

20代の求職者は、業界や職種に対する知識がまだ浅いため、採用側が当たり前に使っている専門用語に戸惑うことがあります。たとえば「既存顧客のフォロー」「巡回業務」「インセンティブ支給あり」といったわかりそうな表現も、20代の求職者にとっては具体的にどんな仕事なのかイメージしづらく、関心を持つ前に読み飛ばされてしまう可能性があります。求人原稿では、できるだけライトでわかりやすい表現を用い、未経験者でも仕事内容を自然にイメージできるよう工夫しましょう。

2. 他社との違いを明確に示す

求職者は1社の求人だけを見ることはなく、複数の同業他社の求人と比較しています。その中で選ばれるためには、「どこに違いがあるのか?」を明確に伝えることが必要です。「福利厚生が充実」などの一般的な表現では差別化にならず、導入の背景、実際の社員の感想などを具体的に示すことが効果的です。特に「この会社は他と違う」と思わせるためには、求人の競合である同業他社が記載していない情報であるかどうかが、応募の分かれ道になります。

3. 仕事内容に「なぜやるのか」の意味を持たせる

単に「これをやってください」という指示型の求人では、20代の心に響きません。社会人経験が浅いからこそ、仕事の意義や目的を理解した上で取り組みたいという欲求が強いのです。求人原稿の中に、「なぜこの業務を行うのか?」「誰のために役立つ仕事なのか?」「この仕事を選んだ人の理由」といった"WHY"の視点を入れることで、納得感を生み出すことができます。目的意識を与えることが、20代の行動意欲を引き出す鍵です。

4. 応募者の心を動かす「リアルな職場」を伝える

求人原稿は、ただ情報を並べるだけでは読み流されてしまいます。特に20代の求職者にとって、「自分がここで働くイメージができるかどうか」は応募判断の大きな要素です。そこで重要になるのが、現場のリアルな雰囲気や、働いている人たちの人柄を感じさせる文章表現です。

たとえば、株式会社セブンピクチャーズの求人原稿には「焼肉好きで週末はキャンプ三昧の事務員さんと働きます」という一文をあえて記載しています。これは、単なる業務説明では伝えきれない職場の空気や人間関係のあたたかさを表現したもので、他社の求人ではあまり見かけないユニークなアプローチです。この一文を読んで「雰囲気が良さそうだと思って応募しました」と面接時に言われることも多く、まさに“心が動いた”結果といえるでしょう。

こうした表現は、20代の「共感」や「親しみ」を引き出し、応募への後押しとなります。数ある求人情報の中で、記憶に残る原稿にするためにも、リアルな職場の描写は積極的に取り入れるべき要素です。

まとめ:求人は“長さ”ではなく“伝え方”。20代に届く求人原稿の条件とは?

中小企業が20代の正社員を採用するには、求人の「長さ」そのものよりも、「伝える内容」と「その設計」が最も重要です。20代の求職者は経験が浅く、情報感度が高く、感覚的に仕事を選ぶ傾向が強いため、リアル感・共感・納得感を与える求人原稿を作成することが不可欠です。

そのためには、専門用語を避けてやさしい言葉で説明する、他社との違いを明確に打ち出す、「なぜこの仕事をするのか?」をきちんと書く、そして応募行動を促すような心を動かす仕掛けを用意することがポイントになります。求人原稿の情報が読みやすく整理されていれば、文章が長くなっても問題ありません。

自社の求人原稿を客観的に読み返し、「20代の求職者としてどう感じるか?」という視点を持つことも、中小企業にとって重要な“採用力”の一つです。もし、客観的な視点を持って読み返すのが難しいと感じる場合は、情報を端的に整理し、必要な要素だけをわかりやすく伝える構成にまとめるのが効果的です。

甲斐 尊之

株式会社セブンピクチャーズ

甲斐 尊之

■株式会社セブンピクチャーズ HR事業部 部長
■採用定着士 勉強会 講師(一般社団法人採用定着支援協会)
人材採用&人材定着支援、求人コンサルティングに従事。企業の人材獲得から定着までのプロセスを最適化し、長期的な成功に貢献。実践的な解決策と戦略的アプローチで、企業の人材戦略を強化し、組織の成長を促進しています。

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