
求人を出すとき、「できるだけ理想の人材に来てほしい」と考えるのは自然なことです。
学生時代にスポーツをしていた人、キャプテン経験がある人、結婚していて生活が安定している人、元営業職の人…。条件を挙げ始めると、いくらでも出てきます。
しかし、求人広告には「書いてはいけないこと」が存在します。
知らずに掲載してしまうと、応募が集まらないどころか、法令違反や企業イメージの低下につながる可能性もあります。
人材募集・採用活動を行う企業にとって、「求人に書いていいこと」「書いてはダメなこと」を正しく理解することは、コンプライアンスの基本です。
■ なぜ求人広告の表現に制限があるのか?
求人広告は「公正な採用選考」を前提としています。
応募者の基本的人権を尊重し、差別につながる表現を避けることが大前提です。
つまり、仕事内容と関係のない個人属性で応募を制限することはNGという考え方です。
■ 出生・出身地に関する表現はNG?
例えば、
・大阪出身の方
・地元出身の方
このような出生や出身地に関する条件は、原則として求人広告に記載できません。
業務内容と直接関係がないにもかかわらず出身地で制限をかけることは、不適切な差別につながるおそれがあります。
■ 性別を限定してもいいのか?
・男性の方歓迎
・女性のみ募集
このような性別を限定する求人は、原則として認められていません。
「体力仕事だから男性」「受付だから女性」といった固定観念による記載はNGです。基本は性別不問での募集です。
■ 家族構成を書いてもいいのか?
・シングルマザーの方歓迎
・結婚している方
・子どもがいる方
家族構成に関する条件も、仕事内容と直接関係がない限り記載できません。
採用基準はあくまで能力・経験・適性です。家庭環境で判断することはできません。
「これは書いてもいいのか?」と迷う場面は必ず出てきます。
そのときに使える、非常にシンプルで実践的な判断のコツがあります。
それが、
「本人が後天的に取得できるものかどうか」
という視点です。
■ 後天的に取得できるものは一部例外を除き原則OK
例えば、
→ 運転免許
生まれつき運転免許を持っている人はいません。教習を受け、試験に合格すれば基本的には誰でも取得できます。
そのため「普通自動車免許必須」という記載は問題ありません。
→ 職種経験
営業経験、事務経験、フォークリフト作業経験なども同様です。
その職種を選択し、努力すれば誰でも経験を積むことができます。
→ 資格・スキル
簿記資格、ITスキル、語学力なども、学習や訓練によって習得可能です。
このように、本人の努力や選択によって取得できるものは、職務に必要であれば求人に記載しても問題ありません。
■ 先天的なものはNGと考える
一方で、本人が絶対に選べないものはどうでしょうか?
・生まれ故郷
・肌の色
・性別
・家族構成
・出生
これらは本人の意思ではどうにもできません。
後から取得することも、変更することも原則できません。
だからこそ、求人広告に書くことがNGなのです。
採用活動において重要なのは「その仕事ができるかどうか」です。
生まれ持った属性は、仕事の遂行能力とは本質的に関係がありません。
■ 求人に書いていいかの最終判断はどうする?
それでも迷う場合は、専門家や最新のガイドラインを確認することが重要です。
最近ではAIに確認するという方法も一つの手段です。
「これは本人が努力で取得できるか?」
「これは生まれつき変えられないものではないか?」
この2つの問いを自社内で共有するだけでも、求人原稿の質は大きく変わります。
求人に書いていいこと・書いてはダメなことを考えるときは、
後天的に取得できる能力や経験かどうか。
本人が選択できない属性ではないかどうか。
この2つの視点が一つの判断材料になります。
最近は求職者側も求人票の内容を非常によく見ています。給与や休日だけでなく、「どんな言葉を使っているか」「どんな人物を想定しているか」まで細かくチェックしています。インターネット上には求人に関する情報や口コミも多く、コンプライアンス意識の有無はすぐに見抜かれる時代です。
もし求人広告の中に、性別や出身地などを連想させる表現が含まれていた場合、「この企業は時代に合っているだろうか」「採用基準は公平だろうか」と不安を抱かれる可能性があります。法令違反にあたらないグレーな表現であっても、求職者の印象を下げてしまえば、企業評価や信頼性に影響することは十分に考えられます。
特に優秀な人材ほど、企業選びを慎重に行います。コンプライアンスを守っていないと受け取られる求人は、「応募しない」という選択をされる原因になります。つまり、何気なく使っている一文が、理想の人材を遠ざけている可能性があるということです。
求人広告は単なる募集要項ではなく、企業の姿勢や価値観を映す“メッセージ”です。だからこそ、表現一つひとつに配慮し、公正で開かれた採用姿勢を示すことが、結果として応募数の増加や企業ブランドの向上につながります。